香港は長寿大国だった、その秘訣は医食同源:「健康は食にあり」

日本の厚生労働省の調査によると、2015年の香港での平均寿命は、女性が87.32歳、男性が81.24歳と、男女ともに日本を抜いて世界一となったそうです。

正直言って、以外です。香港に行ってみればわかると思います。人口密度が高く、札幌市と同じぐらいの面積に700万人以上が住んでいるのですから、どれくらい密集していることか。

ゴミゴミしている印象があります。長寿村で有名なコーカサス地方のように、水も空気もおいしい地域なら長寿者が大勢いるのも納得しますが、香港だとピンと来ません。

では、環境では他の長寿村には負けますが、ここ香港ならではの健康法があるに違いありません。

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食生活、漢方スープをよく飲む

華人でもある私自身が思いつく香港の長寿の秘訣は、正直なところ食生活ぐらいしか思いつきません。お世辞にも良いとは言えない環境に住んでいるのに国民が長生きしているのは、それらの環境の悪さを打ち消すぐらいに食生活に何か秘密が隠されているのではないでしょうか?

飲茶

香港と言ったら飲茶(ヤムチャ)。点心を食べながらお茶を飲む。

もちろん、お酒も飲みますがお茶を飲む方が一般的です。今でこそ、点心を食べるのがメインになってしまっている感じがしますが、そもそも飲茶(ヤムチャ)は字のごとくお茶を飲むことから始まりました。

この飲茶という文化が香港ならではの健康の秘訣の1つだと思っています。

お茶を飲みながら、好きな点心を選んで食べる。おいしいものを食べれば人は幸福を感じますよね。中国では円卓で食事することが多いのですが、円卓は大勢で一緒にワイワイガヤガヤと会話を楽しながら食事をとるのに適しています。

飲茶はそういう意味では友達や家族で円卓を囲み、おしゃべりをしながら食べるのにピッタリの食事のスタイルです

一般のレストランとは違い、飲茶専門店は活気が違います。気兼ねなくおしゃべりを楽しみ、よく笑い、おいしいものをよく食べ、そしてお茶をよく飲む。

香港ではさまざまなお茶をよく飲みますが、私が思うにはお茶を飲むことで、脂っこい料理を食べてもお茶に含まれている成分のおかげで、脂肪の吸収を抑えているのではないでしょうか?

特にウーロン茶は、ウーロン茶特有のポリフェノールが含まれいて、脂肪の吸収を抑え、脂肪分解を促進する働きがあると言われています。

食事中にウーロン茶を飲めば、脂っこい料理を食べても脂肪の吸収を抑えてくれるのがうれしいですよね。ダイエットをしている人にとってはとても簡単な方法です。

薬膳スープ

シンガポールの長寿の秘訣としても取り上げましたが、香港でも薬膳スープをよく飲みます。薬草で作ったスープなので、自然の薬といっても良いと思います。まさに「薬食同源」です。季節にあったスープ、体調に合わせたスープを作るため、病気の予防にもつながっているのでしょう。

子供の頃の食事に、母がよく薬膳スープを作ってくれました。どんな薬草なのかさっぱりわかりません。とにかく体に効きそうだとはっきりわかるぐらい、苦いことだけは覚えています。

もっとも、すべての薬膳スープが苦いとは限りません。入れる材料にもよりますが、中には果物を入れて飲みやすくしてあるスープもあります。これも、季節ものを使っているのと、飲む人の体調に合わせて作ってあげているからです。

結婚する26歳の頃までは、まだ親元に住んでいたため、毎日のように薬膳スープを飲んでいました。その頃はたいして大きな病気をした記憶がありません。結婚後は日本食が中心になり薬膳スープを飲まなくなりました。

しかし、肝炎が発症し肝ガンができてからは薬膳スープを頻繁に飲むようになりました。薬膳スープを毎日作るのは大変なので作り置きしてあります。入っている具はもちろん食べられますが、食事以外の時にはスープだけを温めて飲んでいます。

特に季節の変り目や、寒いと感じる時は薬膳スープを飲むようにしています。しょうがとニンニクを入れているので、体が温まっているのがよくわかります。

漢方ドリンク

家庭で頻繁に薬膳スープを作って飲むのが一番よいのでしょうが、面倒と思う人もいます。

そこで、そういう人たちのために、香港の町中では気軽に漢方ドリンクが買えるようになりました。漢方を売っているお店に行けば自分の症状や体調に合った漢方を配合してくれます。それを小さな袋ごとに分けておけば、家で作るのもそれほど億劫ではなくなります。

あるいは、店頭でも24種類の漢方や薬草を配合して作った漢方ドリンクが売られています。気軽にジュースを買って飲む感覚で漢方ドリンクが飲めるのが良いですよね。

日本でも自動販売機にコーヒ缶のようにホットで漢方ドリンクが売られるようになれば、国民の健康が少し改善されるかもしれませんね。

そもそも、市販で売られている胃腸薬の配合を見ると漢方の配合に似ていると思いませんか?身近で使われている薬には植物から取り入れているものが意外と多いのです。

医食同源に基づく食生活

香港の人たちが長寿なのは、医食同源を知識だけでおしまいにするのではなく、ちゃんと生活に浸透しているからです。健康への意識が高いため、食生活をはじめ毎日の生活習慣も病気にならないように気を配っています。風に当たらないようにとクーラーを避けたり、冷たい飲み物は控えるなど、子供の頃から親がうるさく言っています。

食は広州にあり

香港は広東語を話すことからわかるように、大部分が広東人。

広東料理といえば「食は広州にあり」と言われるように、世界的にも高く評価されている料理です。広東料理の本場は広州でも、腕のいい料理人は高い給料を払ってくれる香港に流れてきています。

そのため、逆に洗練された広東料理を食べるのなら香港の方がいいでしょう。

広東料理の特徴として、淡・生・鮮の3つが挙げられます。

  • 」:味があっさりしている。食材のもち味を濃い味で台無しにするのでなく、ちゃんと生かす調理法を取り入れている。
  • 」:火を通しすぎると身が固くなったり、パサパサして、おいしくありません。そのため、できるだけ生っぽく仕上げるようにしています。もちろん、火をちゃんと通さないと細菌や寄生虫の心配があるので、生で食べることはありません。

よく、鶏肉をゆでる時も9割ぐらいに火が通ったらお湯から出します。蒸し魚も、魚を蒸すのを専門にしている料理人がいるぐらいです。それだけ、火の通りぐらいに気を配っている証拠です。寄生虫の心配さえなければ、生きた酵素を摂取できる分、本来は生で食べる方がオススメですけど。

  • 」:料理の直前まで生きていた食材を使うことを好みます。魚や肉などはもちろん、野菜から果物まで、とにかく何でも新鮮でなければ納得いきません。

フランスのスーパーが中国圏に進出してきた時も同じです。魚は水槽に入れて、生きたままで売ります。ヨーロッパみたいに死んでいる魚では、誰も買わないからです。このように、食べるのが大好きなため、食へのこだわりは半端ありません。

もっとも、私は生きていても狭い水槽に何日も閉じ込められている魚よりも、日本のように釣ったばかりの魚を野締めにした方がおいしいと思うのですけど。

食事のパターンは日本と同じく一汁三菜が基本。肉か卵料理、あるいは魚や豆腐料理が中心ですが、野菜料理もよく食べます。さらに、毎日のように薬膳スープを飲む。

広東人の人たちは食事をおいしく、楽しく食べることが上手だと思います。ここにも、健康の秘訣があるのではないでしょうか?

詳しい食品表示

農薬や添加物などが使用されている商品が話題になると、その商品を全く受けつけなくなります。
それだけ、香港の人たちは健康に対する意識が高く、自己管理がしっかしているといえるでしょう。体に悪いと思われるものを知ると、全く口にしないという意識があります。

そのため、香港の食品表示はかなり複雑な物となっています。原材料や量目、賞味期限だけではなく、栄養成分の表示も詳細に決められています。

政府が増加する生活習慣病の予防の目的で、2010年に改訂したものです。エネルギーやたんぱく質、糖、脂質、トランス脂肪酸や飽和脂肪酸、カルシウムなどの含有量、アレルゲンなどが細かく表示されています。

こうすれば、消費者の意識がもっと高くなるし、食品製造会社も身を引き締めて、健康を気遣った商品を開発するようになるはずです。

貧富の差が少なく、教育水準が高い

教育の大事さはご存じの通りですが、勉強することだけが教育ではありません。食に関する正しい知識を持ち、食生活や規則正しい生活習慣を子供に伝えるのも教育です。その役割はもちろん、各家庭でするのが望ましいのでしょうけど、親がそもそも健康への意識がなければ仕方がありません。

アメリカのような大国の場合、富裕層は健康への意識が高いため、食品や生活スタイルが健康なものとなっています。しかしその一方では、低所得者は健康への意識が低いため、逆にジャンクフードをたくさん食べる傾向にあります。

寿命が教育水準に比例して高くなることがわかると思います。このように、教育水準にばらつきがある大国では、健康への意識にもばらつきができます。国の平均寿命が全体的に下がるのも仕方がありません。

香港のような小さい国は幸いなことに貧富の差が激しくなく、教育水準が高いおかげで、全体的に健康への意識も高くなります。このように国民の健康への意識が高ければ、高いほど、食生活や生活スタイルも変わってきます

そうなれば、健康関連の食品や製品が売られるようになるし、国全体が健康に気を配っている人たちにとって住みやすい地域へと変

まとめ

香港での健康の秘訣の幾つかはシンガポールと似ていますが、同じ中国の文化をベースにしているとはいえ、香港特有な点も少しはあります。

  • 薬膳スープを飲むこと。しかし、香港ではもっと気軽に町中でも漢方ドリンクが売られている。
  • 飲茶という文化。シンガポールではそれほど浸透していない。
  • 医食同源を心がけている。広東人が多いため、広東料理が中心の食生活が香港に根付いている。
  • 食品表示が詳しく明記されている
  • 教育水準が高く、健康への意識も高い

香港の人たちの健康管理は特に食を中心に行っていることがわかります。「食は広州にあり」ではなく「健康は食にあり」と言い換えてもいいのではないかと思ってしまいます。

健康に気を配って、薬膳スープを飲んだり、野菜を多く摂っているとはいえ、飲茶では肉も食べます。

広東料理は味付けが比較的サッパリしている方ですが、それでも油をよく使う中華料理には変わりありません。お茶を飲んで脂肪の吸収を抑えてますが、全くゼロではないはずです。

それでも、平均寿命が高いのですから、実は本当の秘訣は料理そのものよりも、おいしく食べることと、みんなで楽しく食べることの方が大きいのかもしれませんね

世界の長寿村の食生活がいたって質素なことからもわかるように、毎日のように飲茶に行って点心を食べてたら、はっきり言って健康とは言えないはずです。そう考えると普段は薬膳スープと医食同源に基づく食事をし、皆と一緒に食べるちょっとした贅沢な食事は時々ぐらいにしておくのがベストでしょう。

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