回想記 4:生存率が高くなるからと肝臓の移植を勧められる

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肝移植をした方がいいのかどうか悩む

主治医に紹介された移植の専門医に会いに、フランスのストラスブール大学付属病院まで行ってきました。目的は2つ。今後の治療と移植について話を聞いてくることです。

主治医から渡された招待状と今までの経緯、検査結果の説明が書かれたレポートを見せました。その時の医者の第一声は「どうしてここに来たのですか?ガンを摘出したばかりで、肝臓にはガンはないはずですよね。」でした。

「別に私の希望で来たわけではありません。主治医に勧められて来ました。」そう答えると、医者は私の主治医に対して驚いていました。

「ここの移植科を訪れる患者は、今すぐにでも移植を必要としている人たちが来ます。あなたの場合は急ぐ必要がありません。」と言うのです。

ここからです、主治医に対して少し疑問に思うようになったのは。

この日はとりあえず、血液検査を受けただけで帰りました。治療の方針は検査結果が出てから決めるとのこと。

後日、その医者から連絡が来て、錠剤を2つ併用することに決まりました。ラミブジン(ゼフィックス)とアデホビル(ヘプセラ)です。それぞれの薬による単独での治療では、もう効き目がありません。ウイルスがこれらの薬に対して耐性を持ってしまったのです。しかし、併用すれば効き目があるという結果が出ていたそうです。

もっとも、この併用による治療も1年しか効果がありませんでした。

手術後の一年間、何度も医者から移植を勧められます。肝臓ガンの再発リスクがあるから、今なら肝臓が健康な状態にある、するなら今しかない。毎回、会う度にそう聞いてきます。主治医の言うとおりに肝移植をした方がいいのか悩みました。しかし、移植をすることが納得できないのです。

主治医が自分の点数稼ぎか、肝移植の事例がほしいから移植を勧めているのではないかと思ってしまうのです。

結局、日本でセカンドオピニオンを聞いてから決めることにしました。とりあえずは移植の件は考えますと主治医に伝えて、返事は保留にしてもらいました。

セカンドオピニオン

手術をした次の年の夏に日本に数週間行くことにしました。今回は日本訪問の目的は、肝炎の専門医に会って自分のこれからの治療方針を相談してくることです。

これまでの経緯を説明し、ヨーロッパの主治医からは肝移植を勧められていることを話しました。そして、肝移植をした方がいいのかどうかという質問に対して、日本の医者は「オススメしません」とキッパリ言いました。

その理由として簡単にまとめるとこんなようなことを言っていました。

  • 手術で肝臓の一部分を摘出しても、肝臓は再生される
  • 肝機能が正常に働いているうちは移植をする必要がない
  • 移植すれば、臓器拒絶反応を起こす可能性がある
  • そのリスクを回避するために、免疫抑制剤を飲まなければいけない、副作用が強く、体にかなりの負担がかかる
  • 移植は最終手段として使うべき

移植の方がリクスは高い気がするので、しないことに決心しました。あの時点では、肝機能は正常です。ガンの再発するリスクはありますが、再発しないかもしれません。肝移植は手術自体がかなりハイリスクです。術後感染症、拒絶反応の可能性もあります。

それともう一つ、ヨーロッパの主治医に対して不信感があることも影響しています。自分たちの点数稼ぎに移植を勧めているような気がしてなりません。

ヨーロッパに戻り、主治医にキッパリと移植をする意志はありませんと伝えました。その場ではそれ以上、突っ込んで聞いてきませんでした。しかし、その後何年間にわたって定期検診を受ける度に「本当に移植はするつもりないのか?」と何度も質問するのです。

ウイルスマーカーの数値は正常。超音波による肝臓の線維化の硬度を測って見ると、ほぼ正常に近いという評価。これだけ肝臓が正常に近い状態であるのなら、移植をする意味がありません。

さすがに医者も移植を勧めたくても、説得力が乏しいことがわかったのでしょう。それからは何も言ってきません。

治療薬の効き目がなくなる

手術の後に始めたウイルス増殖抑制剤による治療(ラミブジン(ゼフィックス)とアデホビル(ヘプセラ)の併用)は、1年ほどでウイルスが耐性化して薬の効果がなくなりました。数カ月に一回の血液検査でウイルス量が増えていることがわかったのです。

また、薬を変えることにしました。今度は「ビリアード®錠300mg」という薬で、まだ治験中の薬です。B型肝炎用に開発された薬ではなく、元々は抗HIV薬として開発されたものです。しかし、B型肝炎患者に投与した結果、効果が見られたという研究結果が出ていました。

まだ国から正式に認可が下りていない薬なので、薬局では売っていません。毎回、病院に行ってもらってくる必要があります。

主治医がこの薬を勧めてきたとき、移植の件があったため、鵜呑みにせずにまずはネットでその効果を調べることにしました。主治医にこの薬の効果、副作用などの説明をちゃんと受けてからではないと飲めないことを伝えました。

最初の方は、医者は私が疑ったことに対していい顔をしませんでした。しかし、こっちも命に関わることです。医者に対して申し訳ないなどと言う気持ちは持つ必要はありません。

患者は医者から治療の説明を受ける権利があります。そのことをちゃんと伝えたかったのです。最終的には主治医も理解してくれました。

結局、ビリアードとゼフィックスの併用で決まり。幸いなことにこの2つの薬の併用が自分と相性が良かったのでしょう。あれから10年たちますが、今でもこの薬を飲んでいます。あれ以来、血液検査によるウイルス量の測定では毎回「検出せず」という結果です。

数年前にすごいストレスを抱えていた時期があって、その時だけ一時的にウイルス量が増えたことがありました。

治療を開始した当初は、万が一この薬がまた効かなくなったらどうしようかと悩みましたが、悩んだところでどうしようもありません。その間にまた新しい薬が開発されるかもしれないからです。

肝炎発症から手術までの二年間を振り返って

入院中にこれまでの出来事を振り返って考えました。慢性肝炎が発症し、肝臓が肝硬変一歩手前まで進行、そして最後はガンが見つかり摘出手術を受けるまでの二年間の出来事です。

母子感染でウイルスを母親からもらってしまったのは致し方ありません。運命だと思って受け入れるしかありません。これは自分では選べません。

生まれつき何も病気をもたない健康児で生まれる人もいれば、私みたいにB型肝炎のキャリアとして生まれることもあります。また、ウイルスのキャリアだからといって慢性肝炎が発症しない人もいれば、する人もいます。

いったい、ウイルスのキャリアでも病気が発症する人としない人の違いは何か?問題はそこです。

「火のないところに煙は立たない」ということわざがあるように、肝炎を発症させたのには原因があるはずです。急に肝臓が悪くなったわけではありません。何かが引き金になり肝炎が発症し、そこから徐々に肝細胞が破壊され、肝臓をこの状態にまで放っておいたのは他でもない、自分に原因があるはずです。

全ては自分がとってきた行動のどこかに原因があるはずなのです。まずはその原因を見つけることから始めました。そして、次に考えたのはガンが見つかってからも、生存年数が長い人もいれば、1,2年で亡くなってしまう人もいます。もちろん、ガンの大きさにもよるし、どこにガンができたかにもよります。

それでも、長生きする人はいます。では、どうやれば長生きできるのか?

B型肝炎ウイルスのキャリアの人は一度発症すると抗体ができるのはまれだそうです。だったら、ウイルスと共に生きるしかありません。「一病息災」という言葉があるように、逆に一つ病気を持つことで健康に関心を持つようになり、生活スタイルを変えた結果、長生きすることもあります。

子どもたちの寝顔を見ながら私は誓いました。「自分は絶対に生きてやる、少なくとも子供が成人するまでは」と。

ここからです、私の生活スタイルと人生に対する考え方が変わり始めたのは。

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